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INTERVIEWvol.1

藤本 淳吾

現役時代を振り返り、
新たな環境へ意識することとは

RH

Interview by 林 遼平

2023.04.21

2022シーズンをもって終えた17年間の選手生活を「楽しかった」と振り返る藤本氏。引退後の変化と、なりたい自分へ成長するために現役時代から大切にしていたことを聞いた。

ーー現役引退お疲れさまです。改めてご自身のキャリアをどのように振り返っていますか?

まずは筑波大学を卒業して、最初は10年プレーできればと思っていました。そこまでプレーすれば32歳になりますが、当時、30歳を超えたらベテランという雰囲気があって、そこまで行くとみんな引退していく感じでした。だから10年プレーできればいいなと思うのと同時に「10年しかない」という思いの中で、結果として17年間プレーすることができた。たくさんの方のサポートがありましたけど、やはり一番は近くで妻と子供たちがサポートしてくれたおかげでここまで長くできたのかなと思います。振り返ると、個人タイトルはベストイレブンなどを取れましたけど、チームとしてタイトルを取れなかったので、それがすごく悔しかったです。ただ、いいときもあれば悪いときもあって山あり谷ありでしたけど、トータルで見れば「楽しかった」で終えることができたのかなと思います。

ーー高校、大学と進学し、JリーグではJ1からJ3まで、アンダー世代の代表やフル代表も経験しました。どんなところに難しさを感じていましたか。

高校から大学だとスピードや体格もそうですけど、頭を使うところで差が出てきたりしましたし、大学からプロに入ったときには大学生の時に入っていたシュートが決まらなくてGKのレベルが違うなと最初に感じました。それは当たり前で、代表で活躍しているGKが多くいる中でシュート練習をやっても簡単には入らない。そこをすぐに感じたからこそ、じゃあどうやったら決められるのかを考えました。強いシュートなのか、コースを突くのか、タイミングをずらすのか。そこで「いろいろな工夫ができるよな」という考え方ができたことがよかったと思います。サッカーに対して自分がどうなりたいかを考えて逆算し、「今はこれだよね」という考えができたことで成長に繋がりました。

ーー17年間プレーした中で、長く結果を残し続けるために意識したことはありますか?

やはり基礎技術。止める、蹴る、見るなど、そういう判断が歳を取るにつれてすごく大事というのは気づきました。若いときは自陣のCKからカウンターで前に走って、途中で取られたらまた戻ってというオープンな展開でもガンガン走りながら90分フルにやれていたけど、段々それが難しくなりスプリントの回数や走る距離が少なくなるところがあります。ただ、それが難しくなってきた時にどうするか。もっと要領よくと考えると、先にこのポジションを取っておこう、こうなるだろうなという展開の予測をしておきながら、「こうしてね」というメッセージ付きのバスを出すとその通りになっていきます。それを表現できる技術、止める、蹴るというのがすごく大事なんだなと。だからこそ小さいときに行うパスコントロールやトラップ練習、反復練習など基礎の大事さは肌で感じました。遠藤保仁さんや(小野)伸二さん、俊さん(中村俊輔)、(中村)憲剛さん、(大久保)嘉人さん、玉田(圭司)さんもそうですけど、止める、蹴るの技術がしっかりしている人が長くプレーできているのかなと思います。

ーー高校や大学では反復練習をするイメージはありますが、プロになると少なくなる印象があります。

やはり自主トレですよね。練習が終わってフリーな時間に、練習で出た課題はもちろんですけど、自分が伸ばしたいことをやると。あとは練習が始まる前に少しボールを受けたり、ボール回しで意識高くというか、何気なくやらないようにするということは意識していました。自分がわざと相手に難しいボールを出して、受け手がどういうリアクションするか、向こうからそういうボールはあまり来なかったりしますが、そのボールの軌道を見てどう止めようかなどと考えながらやっていました。最初はやっぱりできなかったですけど、年齢を重ねるにつれてやれるようになっていきました。

ーーいま引退して数カ月経ちました。

外には出ていますけど、全然汗もかきませんし、食べ物の節制もしていません。着々と筋肉が落ち、脂肪が増え、そういうところで引退したと実感しますね。(笑)他には、メディアでも「選手」ではなく「さん」や「氏」となるところでも実感します。プレーしたいなという気持ちは昔よりもないです。それよりも今はコーチとしてやらせていただいているので、スクール生に対してどうやったら伝わるかなどそっちの方にばかり頭が向いています。

ーー引退後、サッカー以外で自分の中の変化はありますか?

生活リズムですね。今までは午前が練習で午後フリーだったものが、午前がフリーで午後は練習になっているのと、休みが土日になっています。選手のときは平日に練習で、土曜が試合、日曜がクールダウン、月曜が休みというのが一般的で連休もそんなになかった。今はまとまった休みが世間と一緒なので、どこに行っても人が多いなと感じますし、普通はこういうものなんだろうなと感じています(笑)。

ーー今後、これまでとは違う生活の中で、いろいろなステップを踏みながら新たな環境に入っていくかと思います。どんなことを日々意識していきたいですか?

やはり人の話を聞くことです。それを自分はこうだからと受け入れないのではなく、「なるほど、この人はこういうふうに考えているのか」と受け入れて、自分が必要なものと必要ではないものを分けながら成長していきたいと思います。高校や大学のときは「俺はこうだ」という意識でやっていました。それでもプロになって、ちゃんと話を聞いていかないといけないなと思いましたし、自分だけでは限界があることを知りました。これから自分がバージョンアップするためにどうすればいいのかを考えても、そういうことをしっかりとできることが大事だと思います。