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INTERVIEWVol.2

福田 師王

高校卒業後、異国の地へ。
決断のターニングポイントとは。

YM

Interview by 松尾祐希

2023.08.08

高校卒業後はJクラブではなく、海外に活躍の場を求めた。異例の決断を下した背景と孤独なチャレンジで気付いたこと

――高校1年生の頃から注目をされ、高校3年次には多くのJクラブから興味を示されていました。海外に活躍の場を求めた理由を教えてください。

高校に入学した当初はプロに行く考えを持っていませんでした。そもそも中学時代は代表やナショナルトレセンに入った経験もなく、中2まではサイドバックをやっていたんです。でも、今の中等部の監督である松本翔監督や竹元真樹総監督からフォワードやトップ下へのコンバートを提案され、ゴールを決める楽しさを知りました。ゴール後にみんなが喜んでくれる笑顔や試合が終わった後に「ナイス!」と声を掛けられるとやっぱり嬉しくて、そこから楽しさを覚えたんです。一方で、代表は中3の冬まで選ばれていなかったので、自分がプロの世界に行けるわけないと思っていました。高校2年生になっても全然考えられなかったし、プロサッカー選手になるイメージはなかなか湧きませんでしたね。

――何がきっかけとなり、プロの世界で戦えると感じたのでしょうか?

現実的な目標に変わったのは、昨年8月にボルシア・メンヘングラードバッハの練習に参加した時です。昨年3月にボルシア・メンヘングラードバッハやヨーロッパのいくつかのクラブに練習参加をしたのですが、その時はプロへの想いは高まっていませんでした。練習に参加するまでプロのチームがどんな雰囲気でどういう環境なのか分からなかったですし。また、3月は時差ボケで食欲がなく、コンディションもあまり良くなかったんです。水だけを飲んでプレーして、パフォーマンスも本当に最悪でした。戦えないし、相手も強いし、ボールも来ない。やっていても面白くなかったんです。そんな自分が「プロで戦えるのか?」って素直に思ってしまって。もう行きたくないって感じていたぐらいで…。でも、周りの人たちから「もう1回行ったほうがいいんじゃない?」と背中を押されたんです。そういう言葉があったから、プロの世界に行こうと思えました。そのタイミングで8月にボルシアの練習に参加したんです。

――ただ、実際に昨年はシーズンを通じてコンディションも良くありませんでした。メンタル面も安定しませんでしたが、プレーに影響していたのでしょうか?

そうですね。高校3年生の頃はトータルで半年間ほどまともにプレーできなかった。チームにはめちゃくちゃ迷惑をかけていましたし。進路を決める点も含めて、悩む時期が多かったので、家族とかには相談せずにずっと1人で悩んでいました。抱え込むタイプなので誰にも相談せず、どうやったらもっとうまくいくんだろうとか考えたりしていましたね。

――苦難を乗り越え、8月の練習参加がターニングポイントになったと。

そうですね。海外の選手に対しても臆さずに立ち向かい、「ここにいる選手より俺は誰よりも上手い」と意気込んでアピールしたんです。その時にシャルケでプレーする吉田麻也選手やボルシア・メンヘングラードバッハのトップチームにいる板倉滉選手からアドバイスをもらえたのも大きかった。「海外でプレーするんだったら、早い方がいいぞ。こっちにきたら世界観が変わる」って言われたんです。

――気持ちが固まった一方で、高校卒業後に海外移籍した選手が大成したケースはあまりないですよね。不安はなかったのでしょうか?

全然、怖くなかったですね。むしろ、自分が第一人者になってやると言う気持ちでした。仲が良かったチェイス・アンリが昨年5月から同じドイツのシュツットガルトでプレーしていたので、彼から「ドイツはヤバいぞ」と言われましたけど、それでも自分の気持ちはかわりませんでした。

――ボルシア・メンヘングラードバッハから育成ビジョンを提示されたことも不安を軽減するきっかけになったと思います。どこに魅力を感じたのでしょうか?

オファーが来た時は本当に嬉しかったですね。一般的に考えれば、日本から選手を獲得するよりも、外国籍枠が関係ないドイツ、オランダ、スペインとかからでも選手を獲得できる。なのに、わざわざ世界的に無名な日本人選手を選んでくれて、 しかも当時の自分はまだ高校生。言葉も喋れないし、右も左も分からない選手を獲得してくれたことが嬉しくて感謝をしています。提示された育成プランも最初からできるだけ多くの試合を経験できるようにしてくれました。僕自身をしっかり育てたいという想いを感じられたのは有り難かったです。

――クラブの環境も素晴らしいですよね。スタジアムに練習場や寮が併設されていると聞きました。病院やホテルも同じ敷地にあります。日本にはあまりない環境も魅力的ですよね。

本当にすごいですよね。最高の環境です。同じ場所でトップチームがトレーニングをしているので、結果を残せればすぐに上のカテゴリーでプレーできる。高校の場合はいくら結果を残しても、すぐにプロの世界でプレーできるわけじゃないので、機会が限られるじゃないですか。でも、ボルシア・メンヘングラードバッハはトップチームで活躍できれば、さらにステップアップも目指せる。そういう環境は本当に恵まれていますよね。

――寮からトップチームの練習も見える環境も素晴らしいですね。フランス代表のマルクス・テュラムから学ぶことが多かったと聞きました。

マルクス・テュラム選手の動きは凄かったです。ハンドオフの動きはかなり勉強になりましたね。メモをとりながら自分の部屋から見て、本当に学ばせてもらいました。ただ、実際にそこはまだ完璧に取り入れられていない。練習とかではできるのですが、試合ではまだそんなにできていないのでそこは課題ですね。