SEARCH

INTERVIEWVol.3

石川 直宏

自分が積み上げてきた
ものはブレない

HR

Interview by 林遼平

2021.11.25

新しいキャリアを開拓し続ける元サッカー日本代表の石川氏が、ネクストキャリアをテーマに現役選手へ「伝えたいこと」とは。

石川直宏

ーー今の選手たちにネクストキャリアに向けて必要なものはどんなものがあると思いますか?

やり切るところで言えば、僕みたいなパターンは少ないと思います。自分が続けられる感覚があった中で、次の行き先がなくて引退する方もいます。だからこそ、その時その時をやり切るのが大事なのかなと。どれだけの人が納得して次に向かえるかはわからないですけど、自分自身に対してやり切ったという風に思えるか。試合に出ていない状況や怪我をしている状況だったとしても、やはりできることはあります。プレーで全てを出し切るのも大事ですけど、日々の生活で出し切った中で、キャリアを終えても全然悪いことではないと思っています。絶対に不安なんです。辞めるということは。僕も不安で寝れませんでした。だけど、そんなに心配することはない。今のキャリアを一生懸命やっていたら絶対に楽しくなる。だから今を大事にして欲しいと思います。

 あと、もう一つは出し切る中で自分がどうありたいかを考える。まずはビジョンが大事です。今回の「ビジョナリー」という言葉は素敵だと思います。僕もビジョナリーワークと言って、自分の中でビジョンを作って、今後どう歩んでいくべきかを語ることがよくあります。そのビジョンが目標になってしまいがちなんですが、本質は目的です。自分がなぜサッカーをするのかという目的を考えること。そういうビジョンを持っている選手たちは人としても魅力的です。ビジョンとビジョンを重ねてまた新しいものを作っていきたいと思っています。

石川直宏

ーー現役を引退してネクストキャリアに悩んでいる人に伝えたいのは、やはりアクションを起こすことですか?

言葉にするのは簡単ですが、それを実行するのはなかなか難しいことです。まずはどんな不安を持っているかを僕らが知ることも大事で、やはり十人十色なんですよね。こういう風にしていったほうがいいとは言いづらい。そういうことを考えると自分を知ることが大事。いろいろな人と関わることで自分はこうなんだと客観的に見る。サッカーのキャリアにおいても自分を知るのは大事で、自分がどういう人間なのか、どうありたいのかを知る。あまり知ることができていない人も多いと思いますが、選手としてどうありたいかを考えている選手の方が僕としては話をしてみたくなります。すごくいい悩みだなと思うんです。不器用であってもいいと思うので。そういう機会を作っていくのがいいなと思っているので、現場で教えることも興味ありますけど、まずはサッカーではないところで成長させたいという思いがありますね。

ーー今後の展望を教えてください。

本当に自分の中のビジョンは、「やりがい、楽しさ、喜び、笑顔」というところです。いろいろな手段があると思いますが、第一に関わる人たちと一緒に楽しみたいですし、一緒に成長したいなと思っています。漠然とになりますが、心の感度と言いますか、いろいろな感度を持っている人たちと触れ合い、自分の感度も高めたいし、お互いを高め合っていきたいと思っています。

ーー支えるだけでなく自分も高めることが大事なんですね。

自分の喜びが人の喜びになったり、人の喜びが自分の喜びになったら喜びは2倍ですよね。そういう感覚です。サッカーも同じですけど、自分が辛い時に一緒に辛い思いをしてくれる。自分の人生なのにそんなに一緒に悩んでくれて、笑顔になってくれて、そこがサッカーの素晴らしさだと思います。そして、それはサッカーではなくてもできると思います。人との関係、距離というか、常に近いところでみんなとやっていきたいです。

ーーその考えは今回の「ビジョナリーアスリート」にも繋がってくると思います。

本当にたくさんの不安を持っている選手が多いと思いますし、今回の取り組みは本当に素晴らしいものだと思います。例えば僕みたいなタイプもいれば、引退して選手の仲介人になっているメンバーもいます。それこそサッカー界の中での新しいコミュニティとなって刺激し合っていけると思いますし、セカンドキャリアの不安を解消させるようなものとなっていくと思います。

石川直宏

ーー「ビジョナリーアスリート」に対してどんな印象を持っていますか?

本当に僕が現役の時にあればよかったなと思いますね(笑)。キャリアの次のステージというところで、その可能性を自分だけでなく仲間たちと高めていけるところが素晴らしいと思います。だからこそ、自分の中でもできることはあると思います。例えば、OBでもサッカーの経験をしてきた中で、自分の経験をうまく伝えていられなかったりすることもあります。そういう彼らが今の選手たちに自分のキャリアを伝えていくことで、また繋がっていきます。これからどんな取り組みができていくのかが楽しみですし、今のキャリアを思い切ってチャレンジしていくためのものになるのかなと思います。

ーー自分が何をやりたいかを考えるきっかけにもなりますか?

考えるだけでなく、それを知る機会になると思います。そう考えると、魅力的な選手がどんどん増えてくると思っています。そうして、今度はそういう選手が集まれば、もっとコミュニティが広がっていく。それは大事ですよ。一人ひとりのサポートもそうですけど、そのコミュニティが強みになると思います。

ーー最後にネクストキャリアに関していろいろなことを考えている選手たちにメッセージを。

自分を信じて欲しいです。自信って成功や結果でも自信になることがあります。でも、結果が出なくなった時に脆いところがある。だから大事にしているのは、自分が出し切ることもそうですし、日々やってきたことを自信にしていく。そうなると結果、負けようが勝とうが自信はブレない。もちろんうまくいかない時に自信が失われる時もあったり、自信がつきすぎて過信になってしまう時もあります。だけど、やはり自分が積み上げてきたものはブレないと思いますし、無くなるわけではない。その時その時を積み重ねて自信にして欲しい。そういうことを繰り返していくと道は開けると思っています。先が見えない状態でも必ず先につながる。自分を信じて突き進んで欲しいです。

これからもトップアスリートなどを招き、キャリアの新しい可能性を解剖していきます。