日本初の女子プロサッカーリーグ WEリーグの開幕という、女子サッカー界において転機となった2021年。 変化する環境の最中で感じたことや、これからのキャリアとは。
ーー今季から女子サッカーの形が変わり、WEリーグとして新たにスタートしました。女子サッカー選手としてどんな印象を受けていますか?
素直に嬉しいです。チームメイトと話していても「本当に女子のプロリーグが出来るのか」と疑問を持っていたこともありましたから。こうやって実現したことは、女子サッカーの一歩として嬉しく思います。
ただ、観客を見ても全然少ないですし、ベレーザの試合でも平均1000人ほどで、多くても2000人でした。盛り上がりという意味では低かったと選手自身も思っていますし、WEリーグの方も感じていると思うので、永遠の課題ですね。でも、リーグができたことが次につながると思うので、まだまだこれからのリーグですし、ここからさらに盛り上げていきたいです。
ーー今年、バルセロナで女子サッカーの試合が9万人を集めたというニュースもありました。
すごいですよね。「いいなぁ」という一言です。それだけの人が集まったスタジアムでプレーすることができれば、最高だろうなと思います。どうやって集めているんだろうなと。むしろ運営の方が気になります(笑)。ベレーザは西が丘でホームゲームをやっていますが、今年は5000人集客を目指した中で2500人の半分でした。それでも素晴らしい雰囲気を感じたので、9万人となれば相当だろうなと思います。
ーー個人としてWEリーグ1年目のシーズンはどう振り返っていますか?
正直、キツかったシーズンだなと思います。なかなか勝ち切れない時期があった中で、連敗しない、次の試合で良い内容で勝つということがもっとできれば充実したシーズンになったかなと思います。個人としては怪我をしてチームを外から見る機会が多くなった中で、これだけ長い時間離れていると見えてくるものもあります。「こういう時はこうした方がいいな」など、考えているところはあるので、そこは今後還元できればと思います。
ーーWEリーグがプロ化したことで周りの目線の変化などはありましたか?
選手同士でもチーム内でも責任を持ってやらなければいけないという話が出ています。よりプロとして見られるようになったと感じている部分はありますね。
ーーSNSを活用し始めた選手も多くいると聞きます。
そうですね。力を入れるようになったと思います。若い世代はSNSを見ますし、自分自身も見ますが、そこが一番わかりやすく伝わるところだと思っています。ただ、個人的にはSNSをそんなにやるタイプではないので、もう少し頑張りたいです(笑)。
ーーここ数年の女子サッカーの変化はどう見ていますか?
海外のレベルがすごく上がっています。フィジカルの強さに戦術的なところがついてくると、シンプルに強いなと思いますね。今、欧州はすごく勢いがあるなと感じます。日本に関しては難しいですね(苦笑)。監督によってもちろんサッカーが変わる中で、戦術的なことを積み重ねてはいますけど、もっとより細かいところでの合わせる作業をしていかないといけないと思っています。
なでしこジャパンが世界一になった時に比べて日本のサッカーがすごく研究され、一方で海外はパスサッカーや戦術的な部分も取り入れ始めました。その中で、フィジカルも強くて足元もあって戦術もある欧州のチームに勝つのは難しくなってきています。そう考えると、日本はより組織的になっていかないといけないと感じています。
ーー自分が代表にどんどん入っていくために、というところで考えていることを教えてください。
個人的には全ての部分を上げていかないといけないと思っています。もちろんフィジカルやスピードに加え、判断の部分だったり、コンビネーションの部分だったりは重要になってくるかなと。よりチームで戦うことにフォーカスしていければなと思います。代表チームは戦術的な練習を重ねるのはすごく難しいですし、いろいろなチームの選手が集まるので考え方も違います。その分、そこを合わせていければより良くなるイメージもあります。
ーー今後のキャリアについて自分の中でイメージしているところはありますか?
いまは怪我で長く離れているので、怪我をする前に自分の中で見据えていたキャリアというのは一旦置いて、今は先を見過ぎずに怪我をしっかり治してコンディションを戻すことに集中しています。もちろん海外移籍には興味がありますし、そこはいずれ行きたいと思っています。ただ、それも運、タイミングがあると思っていて、怪我が治っていないと始まりません。コンディションが戻ってから、その先のことを考えればいいかなと思っていますし、戻った上でどんどん上のレベルにいければと思っています。
ーーネクストキャリアへのビジョンはあったりしますか?
指導者は一切ないです。向いていないと思います(笑)。指導者は昔から興味がなくて、コーチになりたいとかもありません。サッカーに絶対に携わりたいという思いもないんです。だからこそ、ネクストキャリアへのビジョンも今はないですね。
ーースタートアップ企業など、女子サッカー選手で起業している選手もいますが、そういうことには興味を持っていたりしますか?
具体的に持っているわけではありませんが、自分の経験をもとにこれがあれば良かったな、もっと環境的によくなってほしいなと思うことに対して、いずれは携わってみたいという気持ちはあります。