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INTERVIEWVol.2

小林 里歌子

怪我を経験したからこそ
得られたものがある

RH

Interview by 林 遼平

2022.07.28

2年半のリハビリを経て得られたもの。そして伝えたいこと。

ーー2年半のリハビリを経て復帰したわけですが、久々の実戦における変化というのはありましたか?

怪我をした時のチームと復帰後のチームで自分の役割が全く違っていました。高校の時はチームの中心で責任感を強く持ってやっていましたが、復帰後は怪我が長かったこともあってベレーザのサッカーを学ぶことに意識を向けていました。
ただ、アンダーの代表で一緒にやっていた選手もいたのでコミュニケーションは取りやすかったですけど、一緒にサッカーをしていないと出来ないコミュニケーションもあります。そういう意味では、これまでの自分のプレーに対する考え方や役割が違うことで、最初は「この中でプレー出来るのかな」という不安が大きかったですね。

ーー2018年の6月、実に2年6ヶ月ぶりに公式戦復帰を果たしました。その時の心境を教えてください。

覚えているのは、「やばい」という感覚です(笑)。体力はないし、試合勘もない。これは「やばいな」と思った印象が強いです。周りの方は復帰のことにすごく感動してくれたんですけど、自分は焦りしかなかったですね。1回ダッシュしたら全然呼吸が収まらなくて、「これは大変だぞ」と(笑)。リハビリの走りをどれだけやっていても、サッカーの体力とランニングの体力は全然違って、試合やトレーニングを積み重ねていくしかないなと感じました。

ーーそれだけ長い怪我ですと、自身の感覚を取り戻すのに時間がかかりそうです。

試合勘も含めて、自分の感覚が戻ったなと思うまでは復帰してから1年くらいかかりました。高校時代と異なるポジションでプレーしていたので、そこにも難しさがありました。それこそ最初はFWではなくサイドで起用されてガンガン仕掛けることを求められていたので、あまり自分のプレーができていないなと思う時もありましたね。でも、試合を重ねるごとにどんどんプレーの幅が広がる感覚はあったのでポジティブに続けることができたと思います。

ーーその時期を乗り越えたからこそ精神的にも強くなったと感じていますか?

怪我を乗り越えて精神的に鍛えられたと思いますし、怪我でしか得られない経験もあったのでよかったとは思います。ただ、だからといって怪我してよかったというわけではないので、やはり怪我をしないようにすることが一番ですね。

ーーいろいろな経験をしてきた上で、もし昔の自分に会えるならどんな言葉を伝えたいですか?

とにかく試合に出られない時も、目の前の1日の練習を全力でやってほしい。いろいろな感情があってイライラする時もあるし、監督やスタッフに対して「なんで」という気持ちになることもあります。ただ、不貞腐れて終わるのではなく、試合に出られるまでやり続けること。若い時はそういう気持ちを持った方がいいと思いますし、もっとギラギラしていた方がいい。それが自信になるし、大事なことだったなと今は思います。

ーー今、若くして怪我をしてしまっている選手たちがいます。そういう選手たちに対してはどう声かけをしたいですか?

一番言いたいのは、リハビリをする上でうまくいかない時こそやりたがってしまうけど、身体はすごく正直なので、そこをグッと抑える気持ちがすごく大事ということです。若い時は筋トレをやり始めると、やった分だけ強くなると思いがちなんですけど、無理をしないことの方が大事だったりもします。そこは自分が経験してきた中で思います。もちろんやりたい気持ちは大事ですけど、それを抑える力というか、自分の身体と対話して無理をしないことが重要だと思います。

ーー小林選手も身体と対話する時間が増えたんですね。

ちょっとした変化にも気づくようになりましたし、そういうつもりでいてもちゃんと対話できない時もありました。難しいですけど、常に意識していくことが大事だと思います。

ーービジョナリーアスリートは女子サッカーに関連するサポートもやっています。もっとどんなサポートをして欲しいなどあれば教えてください。

自分が学生の時にサポートしてくれる人たちがいればすごくよかったなと思うので、素晴らしいなと思います。現時点でいろいろサポートしてもらっているので難しいですが、学生の時を考えれば、環境の面や食事、お金がないとどうしてもケアなどを疎かにしてしまう選手がいました。それを考えると、若い選手にこそ食事や身体のケアのサポートを多くしてあげて欲しいなと思います。