「足が壊れてしまってプレーできないとなってもいい」 山根選手にとっての日本代表に懸ける思いと、ネクストキャリアとは。
ーー昨年、新型コロナウイルスの影響もあってサッカー界が一度ストップしました。その時期、プロサッカー選手としての価値を考えるようなことはありましたか?
コロナで何もできない時期に、朝から晩まで家にいて庭の草むしりをしている時には、サッカーが無くなったら何をしているんだろうなと考えることはありました。
一方で、オリンピックもそうですけど、多くの人に喜んでもらえるものはスポーツなのかなとも感じました。ただ、コロナ前後で意識の変化があったかと言うと、正直ありません。自分のことで精一杯でした。移籍した後でまだチームのスタイルに馴染めていなかった。そのことで頭がいっぱいでしたね。
ーー今後の自身のキャリアビジョンについてどのように考えていますか?
今、目指しているのはワールドカップに出場することです。そこしか見ていません。大袈裟に言えば、もしそこで足が壊れてしまって今後プレーができないとなってもいいかなと思っています。それくらいW杯に出たいですね。やはりW杯は世界中の人が見る大会ですから。
僕はJリーグに憧れてサッカーを始めたわけではなく、代表やW杯を見るのが好きでサッカーに興味を持ち始めました。だから、国民を背負って世界一をかけて戦う舞台に立ちたいと思いますし、サッカー選手ならばそこを目指さないといけないのかなと思っています。
ーーちなみに引退後のビジョンは頭に浮かんでいたりするのでしょうか?
正直、指導者ができるとは思っていません。もともとサッカーをやっている間、頭を使うというより感覚な部分が大きいので。最近は相手を見てサッカーをしたり、こういう風に立てばいいというのはわかってきましたが、立てばいいと言っても自分の技術や相手のプレスのスピード、どんなチームかを加味した上で感覚的に立っていることが多い。ベンチにいる時はどんなボールが来てもちゃんとピタッと止められるくらいに思っていますけど、中に入ったら違いますよね。外から見たら「なんでそんなミスするの?」と言いますけど、もしかしたら芝生が悪いかもしれないし、ボールに変な回転がかかっているかもしれない。そういうのは、基本的に自分の感覚でやっているので教えられないです(笑)。
ーーこれまで数多くの指導者を見ても感じることですか?
だからこそ、無理だと思いますね。例えば、曺さん(曺貴裁監督)も鬼さん(鬼木達監督)もそうですけど、僕はこれまですごい指導者の方に巡り合うことができました。自分のキャリアを振り返った時に、本当にいいタイミングでいい指導者の方に会えていると思います。そういった指導者の方たちを見ているからこそ、あそこまでできるのかなと逆に思ってしまいますし、軽い気持ちで指導者をやると言っているようでは、曺さんや鬼さんのようにできないと思っています。
ーーネクストキャリアに向けて他にやってみたいことはありますか?
何も決めていません。むしろサッカーに携わるかどうかもわからない。もしかしたら田舎で暮らしているかもしれない。想像できないんです。準備しないといけないことはわかっていますし、選手のうちから何かしらの活動をしておいたほうがいいという風潮もいいことだと思います。でも、まだ僕は何もしていません。ただ、刺激の少ない生活になったらどうしようかなというのは、ふと考えますね。
ーー不安を抱えていたりはしますか?
まずはピッチの上かなと、すぐに思ってしまうんですよね。これは言い訳で、なんでもやろうと思う人は時間がなくても見つけるんです。だけど、僕にはそれができない。そういう意味では結果を残すしかないと思っています。その危機感は僕の性格的に大事だと思っていますし、結果を残しさえすれば目の前に大きなものが待っているかもしれない。そう考えたら、まずは目の前のことを頑張ろうかなと思いますね。
もちろん将来は不安です。生きていけるか、家族を養えるかどうか。だけど、僕はそれが縮こまったプレーにつながることはない。言ってしまえば、本当に一生分を稼いでしまうことができれば、食って寝るの生活をしていても生きていける訳です。そういうチャンスが目の前にあるからこそ、僕はこれまでの崖っぷち人生同様に、目の前にあるチャンスをつかみとりたいと思います。
W杯に行けたら足が壊れてもいいというのは本音で、そこで何を表現できるかが大事。結局、W杯に行った事実も自分の誇りになるし、経歴にも残る。生きていく上で必要なものと、自分が欲しいものが一緒なのがW杯という感じです。