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INTERVIEWVol.3

山根 視来

必死にやって、泥臭く、
相手より走る

RH

Interview by 林遼平

2022.03.01

今の山根選手を作り上げるものとは。これまでの出会いや経験から得た学びを語る。

ーーこれまで中村憲剛氏や坪井慶介氏など様々な偉大な選手たちを見てきたと思います。彼らからネクストキャリアに向けて学んだことはありますか?

そういう人たちに共通して言えることは、人格者であるということです。人としてすごいなと思える人しか残っていません。もともと自分はプロぶっている人が好きではないんです。例えば、下部組織の子供が挨拶をしているのに無視をしてしまう。現に僕は下部組織に所属していたことがあるので、いろいろな人を見てきましたが、無視をするような人たちが今のサッカー界に残っていないところを見ると、そういう一つひとつのことがつながっていると思っています。今、挙げてもらった二人を含めて、偉大なベテランの選手たちを見てきたことで、僕は絶対に調子に乗るような人間にはならないと決めています。

ーーこれまで話を聞かせていただき、山根選手のメンタリティーの強さを感じています。

うまくなるために、この世界で生きていくために練習しないといけない。いろいろな活力があると思います。サッカーをやっている間は永遠に頑張れると思いますね。逆にそう思えない人の気持ちがわからないところがあります。時間を無駄にする意味がわからない。もったいないなと思うんです。ただ、この考えに至るきっかけとしては、湘南ベルマーレで曺さんに出会ったことが大きいかもしれないですね。大事なことを叩き込まれたと思っています。

 覚えているのは、プロ2年目の開幕前。キャンプからずっとスタメンで使ってもらっていた中で、ポゼッション練習で調子が悪かった日がありました。そこでパッと監督に呼ばれて、「お前はもうスタメンで行ける気でいるのか」と。「そのプレーを次やったらお前を2度と使わないからな」と言われたんです。僕としては1年目の時に試合に出られなかったら2年目はチャンスだと思って頑張っているわけです。その中で、そう言われてしまったら引き締まらないわけがないですよね。「やばい、一瞬も気を緩められない」と思うようになりました。そういう経験があるので、今のメンタリティーに行き着いたと思っています。

ーー自分自身にフォーカスすることが大事だということですね。

僕は“こなしている”人が苦手なんです。個人的にはプロというものを特別視し過ぎかなと思います。高校サッカーの延長で良いのかなと思います。必死にやって、泥臭く、相手より走る。それでいいと思っています。プロになってお金をもらい、いろいろな人にチヤホヤされると格好つけたりしてしまう。そういう選手が僕は嫌いですし、そういう選手で上に登り詰めている人を僕は知りません。だから、謙虚であり一生懸命やる選手が結局、上に行くのかなと思います。もちろんいいものを持っている選手同士の戦いがあるので、ポジション争いの中でどう勝っていくかは大事です。ただ、その土俵に上がるためには一生懸命やること。これしかないと思いますね。

ーーそういう意味では、周りにいる仲間や先輩の存在は大きなものになりそうですね。

その通りだと思います。どういう風に過ごしたらいいか、プロはどういうものかを学ぶのも、先輩から学ぶべきだと思います。ただ、仲良くなった人の影響を受けてしまいがちなので、誰と仲良くなるかは大事です。僕もいろいろな選手と一緒にサッカーをしましたけど、本当に素晴らしい人が多かった。そして、そういう人は共通して人格者だった。むしろ、違和感を感じるような人にはあまり近寄らないようにしています。無理やりにでもプラスのエネルギーを持つ人の方に行ったほうが得られるものが多い。それは若い時にチームメイトの(秋元)陽太さんに教わりました。付き合う先輩は大事だぞと。

 試合に出ていなかったり、思うようにいかないと、人間は弱いので傷の舐め合いをしてしまう。でも、それは一番やってはいけないことなんです。そういうところを含めて、仲良くなる人は大事だと思います。

ーーその点で言うと、ネクストキャリアに関していろいろ学べるビジョナリーアスリートのサポートは重要なものになるのではないでしょうか?

自分で1から10まで考えるより、サポートしてくれるものが充実しているというのは、確かに大事ですね。その分、プレーに集中できるというのはあるかもしれない。もちろんこういったサービスがあればあるほど、いいことだと思っています。どうしよう、何をしたいかわからないという選手がほとんどだと思うので、その時に頼れる場所があるのは大きいかなと。不安がっている選手は本当に多くいると思いますし、多くの選手の助けになるんじゃないかなと思います。

ーービジョナリーアスリートに対して期待することはありますか?

例えば、もう少し歳をとって、体がどんどん動かなくなってきたと思う時に助けてもらえる場所を提供してもらえることはすごくありがたいことですね。そういうものがあることで、僕はこれからもサッカーに集中できると思います。